あ、まただ。
「全く、こんなところにいたんですか?」
唐突に、後ろから少し高い声がした。
…アレン・ウォーカー、その人だ。
「探していたんですよ、がいないので心配しました。」
「アレンがここ分かるとはね」
思わなかったよ?
だってここは教団の屋上。普段から人は誰もいない。
みんな忙しい、というのもあるけれど、それ以前にこんな所は用がない。
ただただ風が抜けて寒いだけなのだ。
人がいないから、ボクは好き。
静かだから、お気に入り。歌を唄える、落ち着く場所。
まして今は夜。
夜空に星と月がハッキリ浮かんでいる分、普段よりも冷えている。
そこにアレンは来た。
ね、予想できないでしょ?
ギュッと抱きしめられれば、あたたかな温もり。
「身体冷えているじゃないですか。風邪引いちゃいますよ?」
「…アレンはあったかいねー…」
「……心が冷たいから、ってラビに言われました。」
「ラビも面白いこと言うね」
「あ、酷いですよまで!」
「ごめん、ごめん。でもボクは思うよ」
「…え?」
笑ってみればアレンはきょとん、とする。
だって
「心が冷たいなら、どうして何の用も無い人間を探しに来るの?」
「…あ……」
「アレンはボクを心配してくれたんでしょ?」
ボクから抱きしめてみれば、顔は赤くなっていく。
クスクス笑ったらうるさいですよ、と顔を逸らされた。
「アレン」
「…何ですか?」
「ありがと」
「別に僕は…」
「――― 好きだよ。」
抱きしめていた手を離して、屋上を後にした。
流れ星、ひとつ
…僕から貴女に言いたかったのに
夜空に浮かぶ月は、見ていた。