「何してるの」

屋上で
フェンスに凭れて
静かに傾げた首
細められた瞳
しっかりとボタンを留めたブレザーに
スカートがはためいていた
きちんと絞められた赤いリボン
蒼い髪と正反対
瞳に映る風景
フェンスの向こうはグランドと


「恭くん」
、何してるのか訊いてるんだけど」
「あそこで待ち人」
「は?……ねぇ、ちょっと」
「ほら、校門」


白く細長い指
透き通るような指
指した校門の影は
桜と群れと


「行くの?」
「ここにいてね、あとで咬み殺すから」
「…うん」



「毎日毎日、飽きもせずよく来るね」
「クフフ、それは君も同じでしょう。僕はここを通りかかっただけだ」
「隣町の中学に通うくらいなんだから来るな」
「おや、“悔しくて顔も見たくない”の間違いではありませんか?」


いやなやつ
青い目と赤い目
青い髪に暗い色の制服


「あぁ、そうでした。も毎日あそこにいますね」
「君には関係ない。僕が咬み殺す」
「女性にも遠慮はなし、ですか。実に君らしい」
「どういう意味だい。は、僕のものだ」
「おやおやトンファーなんか持って、怖いですね。…?」


僕の後ろに視線
なぞって振り向いて
蒼の少女


「あそこにいろ、って、
「そうじゃない。骸くん」
「はい、
「卑怯」
「おや、すみません。悪気はなかったのですが」


僕よりトーンの高い声
青と赤が笑い
現す銀と黒の槍
桜の花を刺した三叉槍


「…!」
「クフフ、には幻覚が通じませんね」
「じゃあこれで。待ってるね恭くん。」
「もう行くんですか?」
「君は」


ひらひらと蒼
ふわり桜
伸ばされた銀は


「僕が、咬み殺す」



痛みに震える腕
ふらつく足


「幻覚?」
「…うるさいな、別にあの程度なんでもない」
「大丈夫」


右手に消毒液
左手に包帯
フェンスに寄りかかった僕の身体
白くなっていく


「終わり。明日からあの人が来たら着いて行く」
「だめ。」
「なんで」
「あれはにいらない」
「恭くんの傷もいらない」


一言で負けた
幻覚は分からない
現実もたまに分からない
ねぇ
「!」
「…ふ、たまにはいいな」


僕は重度の君中毒者



Avvelenando a Lei