呟きが聞こえる。優しい、ハスキーな声が耳許でふわふわする。
「寒いね」
ああ、寒いんだ。私の感覚はもう麻痺しているのかもしれない。寒くは感じなかった。蔵馬は隣で白い息を吐く。
「大丈夫?」
「ごめんなさい、付き合わせて。」
「構わないよ。寒くないですか?」
「えぇ、大丈夫」
蔵馬はゆっくりと呼吸をする。深く深く、そのかすかな息遣いがどんどん冷えていくようで、その息を少し止めさせたくなった。蔵馬がこちらを見て微笑む。
「、何か怖い事考えていませんか?」
「…そう思った?」
「何となくね。」
苦笑混じりになる声が遠くに聞こえる。くらりくらり。まるで熱に浮かされたように、ただ立つ。見上げた空はまだ明るさを失ってはいない。
誘い出したのは私だった。寒空の下でも、たまの我が儘とは言えないけれど、蔵馬と見たかったのかもしれない。流れ星がいくつも見えるらしいと、その蔵馬から聞いた。だけど、やっぱりただ見たかっただけなのかもしれない。
「ねぇ蔵馬」
「何か」
「見えるかな、流れ星。」
「いい子にしていれば見えますよ」
「馬鹿にしないでくださる?」
「ふ…そんな事は」
言いながら蔵馬と空を見上げる。目の前を、たくさんの光が線を描いた。目にする規模はいくつも、ではない。これは、他でもなく流星群だろう。止まる事を知らないかのように、彼方で消えては此方で現れる。儚くも美しい光景、見たことのない営み。
「に、これを見せたくてね。あなたから申し出てくれるとは思いませんでしたが。」
「…ロマンチストが美徳とは限らないわ」
「お褒めどうも。」
感覚の失せていた手が温もりを感じた。
あなたの手は、あたたかいのね、なんて悠長にも身を預ける。こんな私でも、受け入れてくれる人がいるって素敵な事。
「、またオレとこうして空を見てくれないかな」
「こちらこそ、見させてください」
思い出したように取って付ける。
「あなたからね」
「手厳しいな、お姫様」
と呼んで笑ってくれたら、私は多くを言わないんだから。
星に願いを、あなたに愛を