大好きで大好きで、だからずっと一緒にいたい人がいる。彼は…蔵馬は色々と忙しくてなかなか会えないけれど、たまに会えるとなればずっと過ごす。でも、考えてしまう。どんなに分かっていると言ったって、大丈夫だからと言ったって。もう少しくらい、一緒にいられないのかな





休日の過ごし方はバラバラ。会いたい彼が連絡をくれればどこにだってついていくし、友達から誘われれば遊びに行くし、1人のときは家でゴロゴロしたり散歩に出かけたりする。
今日はどうしよう、歩きやすい靴を選んであてもなく歩き出した。
今日の天気予報は晴れ時々曇りだったけど、曇る気配なんかどこにもない青空。快晴の日はちょっと遠出もしたくなる。電車で数駅の街に出て、お店や人だかりの間をゆっくり抜けてゆく。メインの道を外れると静かな住宅街の方に出た。いつもは閑静なんだろうけど、ちょっとした喫茶店やかわいい雑貨屋さんの周りは少しだけ賑やか。私も見てみたいかも、なんて柄にもなく思う。自分にはあまり合わない気がして、進んでお店には入れない。

「……蔵馬…」

蔵馬がいたら、気になるの、入ろうか、って気を遣って言ってくれるんだろうな。
そんなことを思いながら雑貨屋さんを通り過ぎる


つもりだった


「…え……?」

見間違えるはずがない。鮮やかな赤い髪。あの、蔵馬の姿だ。1人で入るなんて珍しいと思えば、隣には、確かに会話をしているらしい、店員ではない茶髪の女の子がいた。





蔵馬が女の子といるなんて、学校では当たり前のように見かけていた。顔もよく頭もよく風当たりもよく、そんな男の子を見逃す子もいないだろう。だけど、休日のこんな時に女の子とお店にいるだなんて想像もしていなかった。学校で女の子を相手にする蔵馬こと南野秀一はお疲れ気味、なのだ。それがまさか、休みにまで相手をするとは思わなかった。
本当は、そんな事ではない。そんな事はどうでもよく、我ながら醜い。
あの隣が、自分以外の女の子なのが、妬ましいだけなんだ。分かっていても、どうしようも出来ない。
蔵馬に見つかる前に、駆け出していた。





次の日になって登校すれば、同じクラスの蔵馬の顔は嫌でも見られる。真っ先に、周りを見ずに登校したらいつもよりもかなり早く教室に着いた。そんな私を見つけた登校直後の蔵馬はにこやかに目の前に来た。無駄のない動きで前の席にさっと座り、口元をゆっくりと解く。

さん、おはよう」
「…おはよう、南野くん」
「どうかしましたか?」
「どうもしないわ」

毎朝その顔を見たら、見られるだけでも幸せ、なんて反射的に思う事もあるのだが、昨日の今日ではそうも思えるほど軽い気持ちではなかった。私はいつの間に、蔵馬と並んでいた女の子に嫉妬するほど醜くなったのだろう。なんと浅ましい。蔵馬は、私のモノなんかではないのに。分かっていても彼女の顔が脳裏をちらつく。

「何か遠慮していることでも?」
「いえ、ないけれど…そんなに、そう、見える?」

視線が突き刺さるようで背筋がぞくぞくする。きっと純粋な心配なのだろうけれど、そんな風に考えられない自分にどんどん腹が立ってくる。

「見えなければ訊きませんよ、恐らく。もしくは、さん、悩み事ですか?」

苦笑した顔が悲しげに映る。

「南野、くん…」
「…?」

お願いだからそんな顔をしないで、その顔をしたいのは私なの。

一緒に居たのは誰?